製造業 自動車業界のこれから

この記事を読破すればこんなことがわかる!!

○大手自動車会社の中長期計画

○中長期計画からわかる今後の自動車業界の動き

大手自動車会社5社の中長期計画の比較

自動車業界のこれからの動向を調査するために大手自動車会社の中長期戦略を比較しました。
2020-2021期の国内自動車業界の売上高ランキングは以下の順番でした。
①トヨタ自動車
②ホンダ
③日産自動車
④マツダ
⑤スズキ
上記大手自動車会社5社の中長期計画を表にまとめています。要約は独自の観点でまとめていますので、詳細はリンク先をご参照ください。

企業中長期計画の要約参照リンク
トヨタ自動車トヨタ自動車は2019年にAnnual Reportを公表しており、以下の計画を発表しています。

○EVを含む電動車の市場投入のみでなく、水素を「将来の有力なエネルギー」と位置づけFCV(燃料電池車)を普及させる。
○パナソニック株式会社や株式会社東芝等との連携により、電池調達体制を整える。さらに、密度の高い全固体電池の実用化を進め、搭載する電池を小型化する。
○車両が自律走行することを目指す「ショーファー」と車両がドライバーの能力を拡充・強化し安全性を高める「ガーディアン」の二つのアプローチから、予防安全と自動運転システムを開発する。
○「すべてのクルマをコネクテッド化」「ビッグデータの活用」「新たなモビリティサービスの創出」を通してMaaS(Mobility as a Service)への取り組みを拡大する。
TOYOTA annual report 2019
ホンダホンダは「すべての人に、『生活の可能性が拡がる喜び』を提供するー世界中の一人一人の『移動』と『暮らし』の進化をリードするー」という2030年ビジョンを掲げており、以下の方向性を公開しています。

○エネルギーサービスとモビリティサービスを組み合わせたHonda eMaaSによって効率的な移動手段や魅力のある体験価値の提供と電力エネルギーの安定的な供給を実現する。
○世界には各地のエネルギー政策や地域性ごとに多様なニーズがあることから、EVだけに拘らずFCVやハイブリッド車など適材適所でカーボンフリー技術を提供する。
○センシング能力の向上や人工知能を用いた予知・予測・判断能力の向上を図る技術開発を進め、安全運転支援及び自動運転技術を高めることで、「交通事故ゼロ社会の実現」を図る。
Honda sustainability report 2020
日産自動車日産自動車は2021年に長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を公表しており、以下の計画を発表しています。

○今後5年間で約2兆円を投資し電動化を加速させ、2023年までに23車種の新型電動車を投入し、グローバルでの電動車のモデルミックスを拡大する。
○全固体電池と運転支援技術の開発を進め、自動車の性能向上を図る。
○EVの生産と調達の現地化を進めるために、生産ハブを主要地域へ拡大する。
日産自動車ニュースルーム
マツダマツダはコロナ禍での学びや反省と経営環境の変化への対応を踏まえ、中期経営計画を見直し、2020年に以下の計画を公表しています。

○ハードウェアの価値向上、次世代EV用プラットフォーム開発を通して技術や商品の投資強化、脱炭素化に向けた生産体制の整備によりブランド価値を向上する。
○デジタルを活用したお客様接点の拡大、サプライチェーン全体での量とスピードの改善、コネクティビティを中心とした新型車の品質向上によりブランド価値を低下させない。
○地産地消を目指す拠点ビジネスの再構築、時代に即したマーケティング変革、CASE技術の開発・調達プロセス変革で原価低減を加速する。
○CASE時代に対応するIT投資・脱炭素化への投資と働く環境・人・社会貢献への投資を進める。
○CASE時代の新しい価値競争に向け、トヨタ自動車等の協業を進める。
マツダ 中長期計画見直し
スズキスズキは「世界の生活の足を守り抜く」と「新興国は今後も成長の柱」を基本理念とし、2021年4月からの5ヵ年における「中期経営計画(2021年4月~2026年3月)~「小・少・軽・短・美」~」を公表しています。

○2025年までに電動化技術を整え、2025年から電動化技術を製品に全面展開、2030年からは電動化製品の量的拡大を図り、走行時のCO2削減に取り組む。
○2050年の製造時CO2排出「0」に挑戦する。
○品質管理において、迅速な原因究明と対策、ばらつきを抑えた製品づくり、トレーサビリティ管理の拡充など、品質問題の発生防止、早期発見、流出防止に取組む。
スズキ、中期経営計画

中長期計画からわかる今後の自動車業界の動き

上記大手自動車会社5社の中長期計画を比較した結果、今後以下5点の自動車業界の動きが見られそうです。

電動車の市場投入

2030年に向けて各社電動車を市場に投入することが予測されます。また、日本のエネルギー事情から、いわゆる電気自動車(EV)のみではなく、燃料電池車(FCV)といった水素をエネルギー源とした自動車の市場投入の動きも見られます。トヨタ自動車や日産自動車は2030年までに20車種を超える電動車を市場投入することを目標に掲げています。

電動車の電池開発

電動車の市場投入に向けて進められているのが、車載電池の開発です。現段階では、電気自動車の航続距離はガソリン車よりも短く、電気自動車のコストは高くなっています。そのため、電池開発によりコストダウンする取り組みが進められています。特に注目しているのは全固体電池の開発です。全固体電池は従来の電池よりも小型化することができるため、搭載する電池を増やすことが可能になります。量産化の段階まで到達すれば、電気自動車のコストダウンが期待されます。

調達と生産の現地化

電動車へのシフトに伴い電池を含めた部品調達や生産体制に変化が生じる可能性が高いです。また、新型コロナウイルス蔓延による物流網の寸断で、生産停止等のダメージを受けたこともありサプライチェーンの見直しが必要になっています。日本においても海外半導体メーカーが日本にファウンダリを建設する等の動きを見せており、ターゲットとする市場エリアで調達・生産する体制が今後進められそうです。

運転支援技術・自動運転技術の開発

センサーやAIを使った運転支援技術の開発に各社取り組んでいます。運転技術未熟者や高齢者の運転をサポートするのが短期的なマイルストーンになっていそうです。長期的な目標として、完全自動運転技術の開発により大衆向けにMaaSとしてのサービス提供を掲げている企業もあります。

Connected 社会の実現

各社自動車が他のものと情報を連携するようになる社会を思い描いています。実際に、トヨタ自動車はWoven Cityという構想を発表しており、街全体が未来技術によって繋がり、幸せと成長を大切にする街づくりを実現しようとしています。

トヨタ Woven City