IT導入コンサルにとってのDX

この記事を読破すればこんなことが分かります!!

○DXの概要

○DXでも大切な「守・破・離」の原理・原則

DXとは

最近話題になっているDXとは、「デジタルトランスフォーメーション」の略称です。デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の「Transformation」は、ラテン語由来で「X-formation」と表現することがあるため、略称として「DX」と呼ばれています。
経済産業省は2018年に「DXレポート」と「DX推進ガイドライン」を公表しており、「DX」を以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

「DX推進ガイドライン」(経済産業省)

「DX」という言葉が世間で注目されるようになったのは、「DXレポート」でITシステムのレガシー化やIT人材不足により2025年以降1年あたり12兆円の経済損失が生じるという「2025年の崖」問題が提起されたためです。特に、既存システムがサイロ化しているため横断的にデータ活用できないこと、既存システムが過剰にカスタマイズされていて保守コストが莫大であること、IT人材が不足していることの3つが大きな問題として取り上げられています。詳細は以下をご参照ください。

DXレポート (経済産業省)

また、新型コロナウイルス蔓延によりワークスタイルの制約を受けたことによって、業務環境の変革を含む「DX」の動きは加速しています。ワークスタイルの多様化など、多くの企業にとってDXを推進することが求められています。

「守・破・離」の原理・原則

「守・破・離」とは日本の茶道や武道などの芸能や芸術における師弟関係の変遷を表したもので、道を極める修行の成長過程でもあります。芸能・芸術の領域にとどまらず、他領域での学びのプロセスとして採用できる考え方であることから、ビジネスやスポーツなどの場でも取り入れられています。「守・破・離」はそれぞれ成長の段階を指しており、「守」→「破」→「離」の順に進行します。それぞれの段階は以下のように特徴付けられます。

教えや慣習を忠実に守り、基本となる型を身につける段階
「守」で身に付けた型を自分の創意工夫で破る段階
型から離れ独自の境地を開き飛躍する段階

この「守・破・離」の原理・原則は、DX推進の一環として新しいITシステム製品の導入を試みる企業の重要なロードマップになると思っています。

DXの「守」

DXの「守」の段階では、レガシーなITシステムを新しいITシステムに置き換えます。忠実に守るべき型は新しいITシステム製品の思想や概念です。一般に新しいITシステム製品の型は、以下2つの特徴を有しています。

①規制や法律等のルールを遵守している
②業務のベストプラクティスを集約している

①に関して、多くのITシステム製品は、規制や法律を遵守し効率的に処理できるようにデザインされています。そのため、製品導入により自社のコンプライアンス向上に繋げられるかもしれません。
②に関して、多くのITベンダーは理想的な業務プロセスや時代にあったシステムの構築を目指し、絶え間なく製品の改良を行っています。また、基幹システムを提供する多くのITベンダーは様々な業種のクライアントと長い年月ビジネスをともにしています。故に、ITベンダーの提供する製品は各業界・各業務でのベストプラクティスを集約しているものになっています。

DXの「破」

DXの「破」の段階では、導入した新しいITシステムに手を加える段階です。ITベンダーの製品は基本的に導入する企業の業務に合わせて追加開発することができます。まさに、製品の型を破り、自社の業務の特徴を引き出せるように手を加えていくイメージです。この段階で想定される開発は、一般的に以下2つに大別されます。

①標準機能の延長として製品が想定している開発(画面レイアウト変更など)
②製品の想定を超える高度なカスタマイズ開発(データベースを共有したモバイル用のアプリケーション開発など)

②は①に比べ高度な追加開発であるため、保守に多大なコストがかかるのと製品サポートを受けれないことが多いです。この2種類の開発を通して、導入製品を企業独自のスタイルに改良し、操作性の高いシステムを実現することができます。

DXの「離」

DXの「離」の段階では、導入した新しいITシステムから離れ、他システムや他アプリケーションとのデータ・機能連携を考える段階です。ITベンダーの提供する製品では、他システムや他アプリケーションとのデータ・機能連携機能を有しているものもあります。昨今、AI、ブロックチェーン、ドローン、IoTセンサーといった最新技術を活用した便利なサービスが凄まじい勢いで増えています。導入した製品と他サービスを連携し全社横断的なデータ活用を推し進めることによって、「2025年の崖」で提起されている課題を回避することが期待されます。

さいごに

「守・破・離」の原理・原則がDXにも通じることを少しでも実感していただけたら幸いです。現状、多くの日本企業では活用できるデータが整理されていなかったり、紙書類での処理が大半を占めているなど、DXの「守」に踏み込めていない状況があります。ITシステムの導入が必要であると理解しながらも、導入には多くの関係者の理解が必要で一筋縄にはいきません。特に、変革を起こすには実際に業務にあたる「現場」の理解を得ることが肝要です。日本の「現場」の業務スキルは非常に高度で、一つ一つの業務が洗練化されています。「守・破・離」の原理・原則を通して長期的なビジョンを共有し、現場の高い業務スキルを一つ上のレベルで活かせるように、プラットフォームを整えていくことが重要です。